ホテルフロントはハイクオリティな接客スキルを学べる職場とあって、これから就職活動を控える学生などにも人気の職種ですが、実際の現場は大変なことやイライラする事も多いものです。
大変な分やりがいを感じやすい仕事でもありますが、良いイメージばかりを持っていると入社をして「こんなはずではなかった・・・」と思うことも必ずでてくるので、今回はビジネスホテルからハイクラスホテルまで合計4社のホテルに勤めた現役ホテルフロントスタッフである私が辛い部分やイライラさせられることを重点的にお話したいと思います。
目次
ホテルフロントと言うと、外見からは華やかにお客様をおもてなしする優雅な職業と捉えられがちですが、実際の仕事は泥臭い作業も多いです。
特にホテルフロントと言っても接客だけを任されるということはほとんどなく、空いた時間に事務作業や客室状況の管理、電話対応などをするので基本忙しいと思っていた方が良いかもしれません。
その中でも体力的、そして精神的に負担を感じる点は以下のようなことが挙げられます。また、今回挙げている辛い点は各ホテル勤務で体験した物を記載しているので全てのホテルに当てはまるわけではないことをご了承ください。
正社員限定ですが、ホテルフロントはシフトや勤務時間に関して苦労することが多いです。
正直なところホテルフロントはそれなりに離職率が高い仕事なので、夜勤スタッフが欠如してしまうと日勤で働いている人でも容赦なく夜勤に回されます。
過去に私が働いていたホテルでは、日勤スタッフとして9:00~18:00の月8日休みで毎月のシフトを組んでいたのですが、あるときベテラン夜勤スタッフが体を壊して離脱をした時に代打として抜擢されました。
そこで初めて夜勤を経験したのですが、それはそれは辛かったです・・・。まずシフトは18:00~翌9:00の超ロング勤務を2日こなして2日休んでの繰り返しですが初日の休みなんて寝てるだけで終わるし、人手が足りていない時は休日出勤も当たり前のようにありました。
おそらくシフトの部分は多くのホテルが2交代制になるので夜勤の場合はどこのホテルも同じようにロング勤務になるはずです。
業務自体は接客の頻度が少ないので日勤よりも遥かに楽ですが、なぜか疲れが溜まり精神的にも辛く感じたので、私と同じように体質が合わない人はきついと思います。
そんなことを言っても24時間営業という性質上、突如として夜勤への打診をされることもしばしばあるのでこれは覚悟をしておいた方がよいかもしれません。
現在では楽天やじゃらんなど複数の宿泊サイトからの予約受付や電話応対、旅行会社の団体予約などが入り乱れて毎日予約が入る状況なので管理をすることがとても大変になっています。
もちろん宿泊サイトの予約に関しては各サイトを一括で管理できるツールを使って在庫管理をしたりするのですが、それでも電話で予約やキャンセルが入るたびに手動で在庫を微調整したりするので、ツールで全てが解決するかというとそうでもありません。
むしろ一昔前よりもやることは増えている状況です。予約が入ることはありがたいことなんですけどね。
ちなみに、この微調整を怠ると残り部屋数以上の販売(ダブルブッキング)をネットサイトでしてしまったり、反対に空きが多数あるのに予約ができない状態になって上司から叱責されることもあるので意外と責任も重い作業になるのです。
ほとんどのホテルではメインとなる来館者の接客をこなしながらこうした細かい業務をするところが多いので、仕事中はなかなか気の休まる時間がありません。
フロントは何事においても、真っ先にお客様の窓口となる部署のため自分のミスをはじめ、清掃など他部署関係のクレームでも必ず応対をします。
私が経験した中で特に多かったクレームが部屋の清掃忘れや予約のブッキング対応など、こちらに完全に非があるものです。お客様によって怒りのレベルは違いますがこれはひたすら話をよく聞いてあげて謝るしかありません。
ホテルによっては宿泊料を無料にしたりの対応をするところもありますが、クレーム対応をうまくこなすコツは表面上は真摯に対応しながら心の中ではあるていど気持ちを割り切って対応することです。
余談ですが、お客様の目線からすると、ホテルに泊まるということは旅先の思い出としての利用や、ビジネスで疲れた体を癒す空間と利用されるわけで、飲食店や他のサービス施設などのお店を使うよりも大半の方は「おもてなし」などなんらかの事を期待をされて来館されます。
そこで、ちょっとしたトラブルが起きると楽しい思い出や癒されたいという気持ちがぶち壊されて怒りが更に増幅してしまうように感じます。
あくまでも体感上ですがホテルで受けるクレームは他のお店よりも過激になる場合が多いように感じるので、抜け目なくサービスを提供する出来るように日頃から意識が大切かもしれません。
ホテルが忙しくなるのは連休期間・土曜日・祝前日です。
世間がお休みの時に繁忙期を迎えるので、家族や友人との予定が合わせづらく更にいえば年末年始なども大半のホテルマンは休めません。
特にこれと夜勤のコンボは確実に他者との交流を狭めるので、プライベートを充実させたい人にとっては避けた方が良い業界とまで言われています。
ここまでホテルマンのつらい部分をお話ししましたが、ここからはイライラさせられることについて話します。
私の場合は個人的に疲れよりも、下記で紹介することでイライラしてしまうことの方がストレスなので大変だと感じています(ホテルマンに向いていないのかもしれません笑)。
どの業界にもお客様とも呼べない嫌な人はいるものなのです。
いわゆるバックレ客です。
ホテルの場合は無断キャンセルをされると抑えていた部屋がまるまる損失になるので、予約時に聞いた住所や電話番号を使って当人へキャンセル料の請求を行います。
しかしこの作業が本当に難しく、実際はなかなか回収に至らないのです。ちなみにキャンセル料請求は以下の流れで進みます。
≪督促電話の流れ≫
大半の人はこの段階で電話を切るか、「キャンセルの電話しましたけど?」などと反論をしてくる。
切られた場合は、再度コールすると電話にでないので留守録に「請求書を送ります。〇〇日以内に振込がなければ法的な~」と伝言を入れておき、反論する人には「履歴を調べますのでキャンセルを申し入れた日と時間を教えてください」と論理的に諭すようにします。
大体の場合はここで早速バトルが始まるか泣き寝入りをしてきて認めないと開き直る客が大半なのでこっちは精神的に疲れることになりますよ。
相手がどんなに汚い言葉を発してきても、こちらは企業なので粛々と手続きの案内をする必要があるのですが私も人間なので・・・本当に腹が立つときがあります。そしてここを突破できる場合は以下の内容に続きます。
・・・とこんな感じで事が進みますが、本当に色々なことを言われます。
そして、ここまでしても請求した金額が振り込まれないことや、そもそも発送先の住所がわからないなんてこともあるのです。
この督促の電話をしているときは気が滅入りますね。「自分に不都合があるとルールを守れない人間ってたくさんいるんだなぁ」と思わせてくれる瞬間です。
先に言っておきますが、クレームとクレーマーは明確に違います。クレームはこちらの不手際によりお客様をご不快またはご迷惑をお掛けしてしまい業務改善をする必要があるものですが、クレーマーはお客様に非があるか完全に言いがかりです。
ちなみにホテルは利用する客層の質が良いのでクレーマーは少ないと思われがちですが普通によくいます。
ただし、体感上はハイグレードなホテルよりも価格が安いホテルの方がクレーマーは多く、フロントをするには気が長い人でないと穏やかに仕事ができないとも思いますね。
クレーマーも実際は言い方の問題という部分もあるのですが、筆者がよく経験するものとして、自分が思っていたアメニティがないとフロントで「なんで〇〇がないの?普通あるでしょ。早く出して」など・・・
無銭で当たり前のよう要求してくる人がいたり、自分で喫煙ルームのネット予約をしたのに「なんでタバコ臭いの?部屋変えてくれる?」と自分に非がある認識をもたず要求をしてくる高齢者など・・・とにかくこうした細かいイライラが募る機会が多いです。笑
もちろんこうした部分はサービスに関わることなので対応をできればするのですが、「ホテルだからこそ何でも要望を聞いてくれる」と勘違いしている人が本当に多いものです。
まぁでもこれは他の接客業界でも同じことが言えるので、慣れている人からすればなんとでもないことなのかもしれませんが、ホテルだと翌日まで居座られるぶん、騒ぎが長期化しやすい傾向にもあるかもしれません。
これはイラつくというよりも余談的なことですが、大半の人がネットでホテル予約をしようとするときに何を参考にするかと言うと宿泊サイトに付随している「口コミ」です。
口コミを見ているとたまに★1つの評価で辛辣なレビューをしている投稿を見ることがありますが、あれも大体は書いてある事と実際の出来事が違って投稿者が都合の良いように解釈して書いていることが大半ですね。
経験上最も多いケースでは、お客様に対応できない要望をされる→丁重にお断りする→少しもめる→口コミでそのことと+αで館内が不潔とか食事に虫が入ってるなどの不確かで抽象的な書き込みをされる。これが鉄板パターンです。
口コミは気軽に投稿できるものですが、宿側からの削除申請は完璧な証明ができない限りほとんど通らないため、そうした書き込みが残ってしまいます。
でも、こうした書き込みは第3者から見てもクレーマーなんだなと気づくことが多いので特にホテル側は気にしていません。
問題なのは、そうしたクレーマーに★1つ評価をされたことによって総合評価がガクンと落ちてしまうことにあります。これはプチイラです。笑
どの世界でもそうですが、気軽に利用できる機能には時に悪意をもって使う人が出てくるので今これを見ている方にはそんな人間にはならないでもらいたい。笑
傍から見る分には、華麗にそして優雅な対応をするホテルフロントですが、その実情は会社とお客様双方に振り回されて肉体的にも精神的にも消耗をしやすい仕事であると言えます。
良く言えばやりがいはかなり感じる仕事ですが、私の周りではこうしたことの連続に幻滅をして業界を離れていくスタッフも多いのです。
かくいう私も何度も違う仕事をしたいと思いながら年齢が年齢なので、結局別のホテルに転職を転々とし今に至るのですが・・・。
それでも、ハイレベルな接客スキルが身に付くことは間違いないので、若いうちにホテルフロントを経験しておけば他の業種の接客業なら問題なく務まるとも思います。
先々の転職も視野に入れて挑戦してみるというスタンスが個人的には最もおすすめかもしれません。今回はものすごいネガティブな感じで記事を書いてしまいましたがこれはホテルの「悪」の部分をすべて書いた結果です。
もちろん、やっていれば感謝をされてとても良い気持ちになることも多いし、悪い部分の程度もホテルによって様々です。自分が成長できるという点ではホテルフロントなんか人間性が特に成長すると思うので、これからこの業界に入る方は是非頑張ってください!